この文章の英訳は、簡単そうで、実は結構、難しい。
「どこの国で生まれたかった?」という日本語の裏には、「どこの国で生まれたかったと、今になってそう思う?」という言外の意(Connotation)が含まれているからだ。
従って、元の文章をまず直訳してみると次のようになる。
✖️ Which country do you want to have been born in?
つまり、「生まれる」の部分を過去形にし、「思う」の部分を現在形にするわけだ。これで、「どこの国でうまれたことを、今になって欲している?」というニュアンスになるはずだ。
ところが、この文章で良いかとアメリカ人に聞いてみると、案の定、「意味は通じるが、おかしな英語だね」という答えが返ってくる。
それでは、ということで次のように変更してみる。「生まれる」の部分を現在形にし、「欲する」の部分を過去形にしてみた。
△ Which country did you want to be born in?
ところが、これではやはり、「欲する」の部分が過去形になっている関係で、「どこの国で生まれることを、過去に欲していた?」という感じになってしまうわけだ。
それではということで、更に次のように変更してみた。「生まれる」の部分と「欲する」の部分の両者を過去形にしてみるわけだ。直訳の意味合いとしては、「どこの国で生まれたことを欲した?」
◯ Which country did you want to have been born in?
これでまあまあ、原文に近いニュアンスとなってきたわけだが、実は英語にはもっと適切な表現がある。「wish」を使って、次のように表現してみる。
◎ Which country do you wish you had been born in?
直訳すると、「どこの国で生まれていたことを望む?」となる。この場合のwishは、過去の事実に反する希望を述べるものであり、これが正に英語らしい表現となるわけだ。
実は驚いたことに、この表現は受験英語にも頻出の、典型的な例文なのである。
今回だけは、受験英語に乾杯!となった。
※補足であるが、この表現は次のように表すこともできる。これは文法的に間違っていると指摘する人もいるが、日常会話では頻繁に使われているので、こちらの表現でも問題ない。
◎ Which country do you wish you were born in?
これにて一件落着!