それは大変ですね。

日本人の会話では、「それは大変ですね」といったような、軽い相槌を打つケースをよく見掛ける。

そんなときに、

✖ That’s a problem.

とか言ってしまうと、とんちんかんな受け答えになってしまう。

△ That’s awful.

なら、まだましであるが、「それはひどいですね」といったきつい感じで、相手の苦労をねぎらう意味合いからは少々はずれる。

一歩進んで、

△ That’s tough.

なら、ニュアンスが近づいてくるが、「tough」と決めつけているところが相手にプレッシャーを与えそうだ。

そこで多くのアメリカ人に聞いてみた。

上記の2つを和らげるような感じで、次の2つの表現に出会った。

〇 That must be awful.
◎ That sounds tough.

控えめな表現ではあるが、これでまさに「それは大変ですね」といったニュアンスになる。

これにて一件落着!

適当にやればいいよ。

日本語の「適当に」には、本来2つの意味があり、1つは「適切に」という意味であり、もう1つは「気を抜いて」という意味だ。

しかしながら、昨今の日本語では「気を抜いて」という意味で使用されるケースのほうが多いので、ここでもその意味合いで英語訳を見ていきたい。

翻訳アプリ等を用いてこれを訳してみると、次のような訳が出てくることがある。

✖ You can do it suitably.
✖ You can do it properly.

直訳すると、「適切にやればいいよ」とか「君ならちゃんとできるよ」といったような意味になってしまい、とんちんかんな訳で終わってしまう。

ではということで、もう少しひねりを利かしてみると、次のようになる。

△ You don’t have to take it too seriously.
△ Don’t be too serious about it.

これらはいずれも、「あまり真剣に考えることないよ」といったようなニュアンスであり、何かを依頼するときに用いる「適当にやればいいよ」とは少々意味合いが異なる。

では、ということで多くのアメリカ人に聞いてみた。

答えはこうだ。

〇 You can go easy with it.

まさに、「適当にやればいいよ」である。

これにて一件落着。

買わなきゃ損だよ!

日本語には「~したほうが得だよ」とか、「~しなきゃ損だよ」という表現がよく用いられる。

がしかし、いざこれらを英語に訳そうと思うと、ちょっと骨が折れる。

「買わなきゃ損だよ!」は直訳すると、

✖ If you don’t buy it, you’ll lose money!
✖ If you don’t buy it, you’ll make a loss.

とかの表現になるが、これらはいずれもおかしい。

買わなきゃ損失だよ!とは言え、お金を失うわけではない。

それでは、ということで、次のように置き換えてみた。

△ If you don’t buy it, it’ll cause you a loss!

と言ってはみたものの、これもまた買わなかったからといって別に損を被るわけでもない。

そこで大勢のアメリカ人に聞いてきた。

こういう時は、「買わなきゃチャンスを逃すよ!」と訳せばよいことが分かった。

つまり、

〇 If you don’t buy it, you’ll miss out!

である。

これにて一件落着!

笑ってる場合じゃない!

相手をたしなめて言うときの表現だ。我々日本人がすぐに思い付きそうな表現は次のような文章だ。

✖ This is not the time when you’re laughing!

✖ This is not the time when you laugh!

✖ This is not the time when you can laugh!

これらはいずれも通じることは通じるが、ネイティブにとってはおかしな響きとなる。たいていのアメリカ人は次のように修正すれば良いという。

△ This is not the time to laugh!

△ This is not the time to be laughing!

△ This is no time to laugh!

△ This is no time to be laughing!

しかしながら、これらは日本語に直訳すると、「今は笑っている時ではない」くらいのニュアンスであり、「~している場合じゃない!」というきついニュアンスに欠ける。

そこで、さらに多くのアメリカ人に聞いてみた。結論はこうなった。

This is no time for laughing!

直訳すると「今は笑うための時間じゃない!」であるが、これがまさに「笑ってる場合じゃない!」というぴったりのニュアンスになる。

これにて一件落着!

さすが、彼だけあるね。

これを英語に訳すのには、そうとう骨が折れる。

適当に言うならば、

He’s great!

あるいは、

He’s amazing!

となる。ただ、これらは単に「彼ってすごい!」と言っているだけなので、「さすが~」のニュアンスはない。

ここで難しいのは、「さすが」のニュアンスをどう置き換えて表現するかである。

まずは、日本語で置き換えるならば、「そんなことができるのは彼だからこそだ」とする。

英語にすると、

It’s just like him to do so!

となる。

これをもっと縮めて、

That’s just like him!

とすれば、さらに口語らしくなる。

アメリカ人に尋ねてみると、次のような表現もよく使われるとのことであった。

That’s him for you!

えっ、こんなので?という感じではあるが、通用するのである。

これにて一件落着!

そんなの当たり前じゃん!

なかなか言えそうで言えない表現だ。

まず思い付くのは、

It’s obvious!

日本語のニュアンス的には、「明らかにそうだ!」となる。

しかしながら、これでは親しいあいだ柄で相手をたしなめるような語感があまり感じられない。

もう少しくだけた表現なら、

It’s no wonder!

とか、

It’s no surprise!

とかになるが、直訳すると「驚くほどのことじゃないよ」となり、「あったりまえじゃん!」から来る親近感が薄い。

That goes without saying!

とかであれば、結構イメージ的に近い。

そこで多くのアメリカ人に聞いてみた。私が気に入ったのは次の表現だ。

That’s a big fat duh!

まさに、「そんなん、あったりまえじゃん!」となる。

これにて一件落着!

そんなこと言われても困る。

これを英語に訳せと言われると、多くの日本人は次のように訳す。

I’ll be in trouble when you ask me that.

しかしながら、これではアメリカ人の頭の中では文脈が混乱する。

もう少しまともに訳すなら、whenをifに変えて、

I’ll be in trouble if you ask me that.

とする。一応意味は通じるが、なんか変な英語ではある。これを日本語に直訳すると次のようなニュアンスだ。

そんなこと言われたら、私は面倒に巻き込まれる。

ではどうしたらよいか。いろいろと意訳を考えてみると、次のような訳が思い付く。

I don’t know what to say when you ask me that.
そんなこと言われても何て言っていいかわからない。

I don’t know how to answer when you ask me that.
そんなこと言われても何て答えていいかわからない。

しかしながら、これも原文に比べるといささか冗長ではある。

そこで多くのアメリカ人に聞いてみた。私は個人的に次の訳が気に入った。

I get confused when you ask me that.

そんなこと言われても困る。

これにて一件落着。

まさか彼に話したわけじゃないよね?

これを英語に訳す際、まず引っ掛かるのが「まさか」をどう訳すかだ。

「彼には話してないよね?」だけなら簡単だ。次のように訳す。

You didn’t tell him about that, did you?

ここに「まさか」のニュアンスが追加となると、驚きと疑いの感情を加えなければならない。

おおかたの日本人は次のように訳す。

You don’t mean (that) you told him about that, do you?

これは日本語に直訳すると次のようになる。

彼に話したわけじゃないよね?

これでも通じなくはないが、疑いの眼差しがいまいち弱い。

ではどう表現したらよいのかを多くのアメリカ人に聞いてみた。答えはこうだ。

You’re not telling me that you told him about that, are you?

日本語に直訳すると、次のようになる。

彼に話したなんて私に言ってるわけじゃないよね?

日本語にすると多少おかしな表現にはなるが、英語ではこれで完璧となる。

まさか彼に話したわけじゃないよね?

これにて一件落着。

せっかくだから刺身も食べていこう。

こんどの「せっかく」は、「せっかく~したのに」というネガティブな悔しさの表現ではない。「せっかく」のもう一つの意味である「せっかく~したのだから」というポジティブな意味合いだ。

和食レストラン等に来て、「せっかくだから刺身も食べていこう」といったような会話だ。

「刺身も食べていこう」というフレーズだけなら簡単だ。次のような表現となる。

Let’s have sashimi as well.

ここに、「せっかく来たのだから」というようなニュアンスを滲ませたい。

普通は次のように訳す。

We came all the way here, so let’s have sashimi as well.

日本語にするとこうだ。

ここまで遥々来たのだから、刺身も食べよう。

これでも通じなくはないが、「せっかくだから」という日本語のニュアンスにいまいち欠ける。

そこで、多くのアメリカ人に聞いてみた。答えはこうだ。

Let’s make the most of it and have sashimi as well.

日本語に直訳すると、次のようになる。

このチャンスを最大限に活かすため、刺身も食べよう。

つまり、「せっかくだから刺身も食べていこう」というニュアンスになる。

なお、英語には残念ながら「食べよう」と「食べていこう」の違いはない。

これにて一件落着。

せっかく作ったのに食べてくれないのね?

これを英語に訳そうとすると、まずつまずくのは「せっかく」という表現だ。

「せっかく」が無ければ簡単だ。普通は次のように訳す。

Although I made it for you, you’re not going to eat it, are you?

しかし、これだけでは次のようなニュアンスで終わってしまう。

これあなたのために作ったのに、食べてくれないのね?

これでもりっぱに通じることは通じるが、「せっかく」という悔しさがいまいち薄い。

そこで、その悔しさを十二分ににじませるにはどうしたら良いものかと多くのアメリカ人に聞いてみた。

彼らの答えは決まってこうだ。下記のように「苦労して作ってあげたにも関わらず」という表現を挟むというのだ。

I went through all the trouble to make it for you, but you’re not going to eat it, are you?

これで日本語の「せっかく」という悔しさが相手に充分に伝わる。

これにて一件落着。