そんな所に行くわけがない!

主語は適当に「I」とか「He」とかにしよう。

まずは出てくる英語は、次のような文型だ。

I will never go to such a place.
He will never go to such a place.

これでも悪くはない。しかしながら、「never go」だと「決して行かない」程度のニュアンスになるので、「~するわけがない」という日本語のニュアンスからは程遠い。

日本語と同じニュアンスになるように訳すのなら、前回同様、「一体、誰がそんなところに行くっていうの?」→「誰も行かない」→「行くわけがない!」という、「would」を使った英語のパターンに置き換える。

Who would go to such a place?

「would」の使い道は限りなく広い。

これにて、一件落着。

行くに決まってるじゃん!

これを日本語に訳そうとすると、多くの人が次のように訳す。

Of course I’m going!(もちろん行くよ)
I’m absolutely going!(必ず行くよ)

これでも合ってはいるが、強調度がいまいち欠ける。

もう少し強調するには?となると、次のような文章が思い浮かぶ。

I’ve got to be going for sure!(絶対に行かなければ)
I’m sure to be going!(行くのは確実だよ)

「決まってる」というニュアンスを入れたいとなると、どうなるのだろうかと、さらに探求する。

There’s no question that I’m going!(聞かれるまでもなく行く)
There’s no doubt that I’m going!(疑いなくきっと行く)

う~ん、いまいちだ。

アメリカ人に尋ねると、次のような回答が得られた。

Why wouldn’t I go?(行かない理由がないよ→行くに決まってる)
Who wouldn’t go?(行かない人なんているの→行くに決まってる)

めでたし、めでたし!で一件落着。

あなた、さっきそう言ったじゃん!

You said that (さっき), didn’t you?

この時の「さっき」は何て言ったらいいのだろう。

考えられる表現は、次の通りだ。

1. a while ago
2. minutes ago
3. earlier
4. before
5. just now

いずれも日本語では「さっき」に該当するのだが、どのくらい「さっき」なのかでニュアンスが異なる。

で、おおよその感触をアメリカ人に尋ねてみると、次のようになった。

1. a while ago(ちょっと前に、この間)
2. minutes ago(数分前に)
3. earlier(数時間前、以前、この間)
4. before(以前、前に、この間、さっき)
5. just now(たった今、今さっき)

で、表題の「さっきそう言ったじゃん」となると、おおかた数分前から数時間前ということになる。

ちなみに、昨日のことを「さっき」と言う日本人はいないだろうが、日をまたいだ時空間でも使えるのが、「a while ago」と「earlier」と「before」になる。「この間そう言ってたじゃん」というようなときは、これらを使う。

では、「before」はそんなに前の場合にしか使えないのかというと、そうでもない。わずか数秒、数分前の事象でも「before」は使えるらしい。つまり、変幻自在で適用範囲が広いのは「before」ということになる。

たいていの人は、数秒~数分前なら「just now」というようだ。

結論として、数秒から数分前なら「just now」、数分から数十分前なら「before」がところだろう。

You said that before, didn’t you?

または、

You said that just now, didn’t you?

ちなみに私のような年になると、10年前の出来事でも「この間(笑)」となってしまうので、「さっき」だけは「どのくらいさっきなのか」はその人の感性によるものとしよう。

あなたは兄弟(姉妹)の何番目ですか?

あなたは兄弟(姉妹)の何番目ですか?

前回と同じ理由で、英語には「あなたは兄弟(姉妹)の何番目ですか?」という表現も適当なものが見当たらない。

無理に訳すなら、こうだ。

What number sibling are you?

ただし、この英語はかろうじて意味は伝わるが、アメリカ人からすると、変てこな英語であることに変わりはない。

そもそもアメリカでは、兄弟姉妹で誰が年上で、誰が年下かという意識はあまり重要ではないし、ほとんどの人は気にしないようなのだ。日本のように年功序列社会ではないのだ。

かえって上記のような質問をすると、「日本人は何でこんなつまらない質問をするんだろう?」と思われかねない。

それでも、あえてどう言ったらいいのかとしつこくアメリカ人に聞くと、 たいていの人はこう答える。

How many siblings do you have? Are you the oldest?

日本語に訳すと次のようになる。

きょうだいは何人いますか?あなたは一番上ですか?

なんだか、侘しくなるような置き換えだ。しかし、多くの人がこう提案するから、これはこれで文化が成り立っているのだろう。

しかしながら、こだわりの強い筆者はこれでは納得がいかない。そこで、徹底的に調べてみた。

答えは、こうなった。

Which sibling are you?

前回の「何代目の大統領」のときと同じパターンだ。

日本語に直訳すると次のようになり、日本語のニュアンスからすると、実に「間の抜けた表現?」のように響く。

あなたはどの兄弟(姉妹)ですか?

しかし、この表現は英語では決まり文句であるらしく、ちゃんと「I’m the eldest.」とか、「I’m the second.」とかの答えが返ってくる。

ネイティブのアメリカ人をつかまえて試してみると良い。

トランプ大統領は何代目の大統領ですか?

これを英語に訳すように言われて、うまく訳せる日本人はほとんどいないようだ。それには理由がある(後述)。

とりあえず、多くの日本人は苦しまぎれに次のように訳す。

What number president (of the U.S.) is (President) Trump?

文法的には合っているので、たいていのアメリカ人はそれでいいと言う。しかし、内心は「変な英語!」と思っているはずだ。

じゃあ、正しい英語ではどう言えばいいのと聞くと、ほとんどのアメリカ人は困惑してしまう。つまり、「何代目の」という表現は英語にはないのだ!

じゃあ、英語ではどうやって尋ねればいいのと聞くと、おおかたのアメリカ人は次のように言ったらどうかという。

Is President Trump the 45th President?

それで合っているのなら、相手は「Yes, he is.」と答えるだろうし、間違っているのなら、「No, he isn’t. He’s the xxth.」と答えるだろうということなのだ。

そんな馬鹿な!ということで、大勢のアメリカ人に事の真意を問いただしてみた。

やはり、アメリカ人の10人中10人が、「残念ながら、英語にはそのような言い回しはない」と言うのだ。彼らも悔しくて、じれったいらしい。

そこで、筆者は思いつく限りの表現を並べて、片っ端からアメリカ人に聞いてみた。結論として、次のような文例に達した。

How many presidents has the U.S. had before Trump?

※直前までのことを言っているので、現在完了形にするのがミソ。

直訳はこうだ。

アメリカはトランプ大統領の前に何人の大統領がいましたか?

答えは「44人」とか返ってくる。つまり、トランプ大統領は45代目ということになる。

この文章を多くのアメリカ人に確認したところ、「それならいいね」という返事が得られた。最初からそう教えてくれればいいのにと思う。

しかしながら、その後にもっと良い表現に出会った。信じられないが、次の英語がもっとも自然で、意味も伝わるらしい。

Which president is Trump?

日本語に直訳するとこうだ。

トランプ氏はどの大統領ですか?

実に信じられないのだが、この表現で「He’s the 45th.」という答えが返ってくる。試しに、いろいろなアメリカ人に確認してみると良い。

ただし、トランプ大統領が45代目であると知らない人も多いので要注意。

雨が降ってきた。

これを英語に訳そうとすると、ほとんどの日本人は次のように訳す。

It has started to rain. (It’s started to rain.)

これでも間違いではないが、これを日本語に逆翻訳するとニュアンス的には次のようになる。

雨が降り始めた(ところだ)。

「雨が降ってきた」と「雨が降り始めた」と、どう違うのだとは思うかもしれないが、こだわりの強い筆者は多くのアメリカ人に聞いて回った。

ほとんどのアメリカ人の答えは次のようであった。

It’s starting to rain. (It is starting to rain.)

これを日本語に直訳すると、次のようになる。

雨が降り始めている。

なんだか、いかにも直訳的な日本語表現であるが、この英語表現で日本語の「雨が降ってきた」とまったく同じニュアンスになるらしい。

私は中学1年生です。

これを英語に訳すと、ほとんどの日本人が次のように訳す。

I’m in the first year of junior high school.

これでも間違いではないが、アメリカ人が聞くと奇異に感じるらしい。

それはなぜか。

アメリカは州によって教育システムが異なるが、たいていの州では小学1年生から高校4年(または3年)までを学年の通し番号で数える。つまり、中学1年生は7年生(または6年生)、高校1年生は9年生(または10年生)という数え方だ(1年生~12年生)。

※小学1年生は0年生(幼稚園)とする州もあり、高校(アメリカではたいてい4年間)は大学と同じように、freshman、sophomore、junior、seniorと呼ぶ場合もある。

したがって、中学1年生の場合は「7年生(0年生から始まれば6年生)」となる。

それと、「年生」を「year」と表現するのは基本的にはイギリス英語のようだ。アメリカ英語では「grade」を使う。

では、次のようにすれば良いのかということになる。

I’m in the seventh grade of junior high school.

ところがこれでは「中学7年生」ということになってしまい、明らかに計算がおかしい。つまり、「of junior high school」は不要なので省いてしまう。すると次のようになる。

I’m in the seventh grade. (the は省略してもよい)

日本人からすると、これでは「私は7年生だ」になってしまい、軍隊の7年生なのか会社の7年生なのかと不安に思う。

しかし、多くのアメリカ人はこれでいいという。「in ~ grade」という表現にぶちあたればほとんどの場合、学校の学年を表すと理解するらしい。どうしても不安であれば、次のように表現する。

I’m in the seventh grade at school. (the は省略可能)

※at junior high school でもなく、at middle school でもないところに注意。

日本語に直訳するとこうだ。

私は学校の7年生です。

これがネイティブから見ると、「I’m in the seventh grade」だけで「私は中学1年生です」になるのだ。決して軍隊の7年生ではない。

来月、アメリカの叔母が遊びにくることになった。

「~することになった」という英語訳は、本当に難しい。

「来月、アメリカの叔母が遊びにくる予定だ」であれば、難なく次のように訳せる。

My aunt is going to visit us from the U.S. next month.

しかしながら、これでは「~になった」という、「突然ではあるが」を含蓄する日本語のニュアンスが伝わらない。

無理に訳そうとすると、次のようになる。

I was informed that my aunt is going to visit us from the U.S. next month.

日本語に直訳すると、「来月、アメリカの叔母が遊びにくることを知らされた」であるが、いかにも苦しい翻訳だ。

で、どうしたらいいのかと大勢のアメリカ人に聞いてみた。

答えはこうだ。

It turns out (that) my aunt is going to visit us from the U.S. next month.

「turns out」は過去形ではなく、現在形で使うところがミソらしい。何で現在形になるのか、アメリカ人でさえ分からないらしい。普段、そう言っているからそれしかないとのことだ。

このラーメンは食べても食べても減らない!

この日本語は日本人同士なら難なく伝わるが、英語に直訳しても、このままで理解できるアメリカ人はほとんどいない。

それはなぜか。問題は2点ある。

1点目。「このラーメンは」を「このラーメンは量が多すぎて」に変更する。理由を述べないと、英語では文の筋が通らない。「このラーメンは魔法のラーメンだから」とも受け取られかねない。

2点目。「減らない」を「食べきれない」等に変更する。アメリカ人は、「たとえ少しでも食べれば減るに決まっている」と考えるのが普通。「食べても食べても減らない」では、これまた魔法のラーメンとなってしまう。

この2点を考慮して、どう表現したらよいか。日本語を次のように変更してみる。

このラーメンは量が多すぎて、食べても食べても食べきれない。

英語に直訳すると、こうだ。

This ramen is too much, so no matter how much I eat, I can’t finish it.

ところが、これでもまだいくつか問題がある。

1点目。「too much」では前回も述べたように、「ひどすぎる」という別の意味にも受け取られかねないので、避けたほうが無難。「too much ramen」の名詞止めに変更する。

2点目。「can’t finish」は単なる本人の思い込みであり、実際には少しずつ減っているのは明らか。したがって、「can’t seem to finish」として、「減らないようにみえる」に変更する。

3点目。接続詞の「so」は「so that」構文を適用すると文が簡潔になる。

これらをまとめると、全体は次のようになる。

This is so much ramen that no matter how much I eat, I can’t seem to finish it.

英語は多民族が使用する言語なので、すべてを細かく説明しないと意味が伝わらないので要注意。

※完成文は複数の英語ネイティブのアメリカ人に確認済み。ちなみに、アメリカ人でも英語ネイティブでないアメリカ人もいるので、確認の際には要注意。

急いでいるときに限って、信号は赤だ!

「~するときに限って」という英語表現がよく分からないとする。とりあえず、次のように訳してみる。

Whenever you’re in a hurry, all the traffic lights are red!

※英語訳から「all」を取ってしまうと、アメリカ人からどの信号の話だ?と突っ込まれる。

これを日本語に直訳すると、こうだ。

急いでいるときはいつも、すべての信号が赤だ!

これでも悪くはない。おおかたのアメリカ人はこれで良いと言う。しかしながら、これでは、「~するときに限って」という日本語のニュアンスがいまいちだ。そんなときは、次のような日本語に置き換えてみる。

すべての信号が赤なのは、急いでいるときだけだ!

これを英語に訳すと、次のようになる。

It’s only when you’re in a hurry that all the traffic lights are red!

ネイティブのアメリカ人大勢に、これで同じニュアンスが伝わるかどうか聞いてみた。答えは、バッチリこれでいいそうだ。